労働条件を変更する場合、労働者の同意は必要か?
労働条件を変更する場合、労働者の同意は必要か?
日本の長期雇用システムにおいて、使用者は自由に労働者を解雇できないこととなっています。
労働者を解雇するにあたっては、客観的に合理的な理由、かつ、社会通念上相当なものが要求されます。
そのため、なかなか解雇できないわけですが、解雇権に制限を加えたままだと、社会情勢の悪化に伴い事業運営が深刻な状態になっても解雇しづらい状況に陥ります。
そこで、なんとか労働者の最低限の生活を確保するために、解雇という手段を採らず、継続して勤務できるように労働条件の変更法理が容認されるようになりました。
労働条件の変更については、無条件に認めるものではなく、労働条件の変更が事業運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働者の受ける不利益を上回っているという高度の必要性が求められます。
また、原則として労働条件の変更を行うには、労働者との合意が必要となります。
労働契約法第8条
- 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
<合意による労働条件の変更の判断基準>
- 使用者側の変更の必要性の内容・程度
- 経営を維持していくためにも労働条件を下げざるを得ない状況なのかどうかが問われます。
- 変更後の労働条件の内容自体の相当性
- 変更した労働条件の内容が著しく不利益な内容になっておれば無効と判断されかねません。
- 労働条件変更に伴う合意の有無
- 労働条件を変更するにあたって、労働者から合意を得ているのかどうかが問われます。
- 合意の有効性
- 労働者の合意が、労働者の自由な意思に基づいたものであることが必要です。
- 合意しなければ、退職してもらうというような強迫めいた合意は無効とされます。また、錯誤による同意も無効と主張できます。
- 「黙示による合意」については、厳格かつ慎重に判断されることが多く、黙示の同意については労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる、合理的な理由が客観的に存在することが要求されています。
就業規則変更による労働条件の変更
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……就業規則による労働条件の不利益変更