実務相談Q&A(能力不足を理由に解雇)
能力不足を理由に解雇することはできるか?
学卒で試用期間を経て本採用となった正社員を解雇する場合と、即戦力としての活躍を期待されて採用された中途採用者を解雇する場合では、解雇の合理性や相当性についての判断要素は異なります。
裁判例をみると、勤務成績不良を理由とする解雇について、能力や適性を著しく欠き、業務に支障があるような場合に限って解雇を有効と判断している傾向が見られます。
ただ単に、能力・適性が問題となるようなケースでいきなり解雇するのは、合理性・相当性が認められず、解雇権を濫用したものとして無効となるものと考えられます。
能力不足ということで解雇に至る前に、業務を行う上で能力が十分でないことを具体的に指摘して改善を促したか、あるいは能力を引き出したり向上させるために、使用者としていかなる指導、教育訓練を行ったか、そしてその方法や内容が適切なものであったか否かが問われることになります。
専門性や高度な能力などを条件として、特定のポストや上級の役職者として採用するといった、いわゆるヘッドハンティングのような場合で、実際には期待したほどの能力がなかったことを理由に解雇する場合には、裁判例をみても、一般の従業員の場合よりも、解雇の合理的判断は比較的緩やかになされています。